米国への同時多発テロに関する政府の誤った対応

2001.10.7
1. 9月11日午前、米国において数千人規模の死傷者を出す同時多発テロが起こった。犠牲者の方々に心から哀悼の意を表するとともに、多くの無辜の市民を殺傷し莫大な被害をもたらしたテロ行為を、怒りをもって糾弾する。
このような残虐非道なテロという凶悪犯罪にかかわった者は、国際的な司法当局による捜査と真相究明によって、法と正義の下に裁かれるべきである。

2. しかし、ブッシュ米大統領はこのテロ事件を「新たな戦争」と呼び、オサマ・ビンラディン容疑者と、これを匿うアフガニスタンのタリバーン政権に軍事報復を行おうとしているが、これは性急で極めて危険な対応である。軍事報復はアフガニスタン市民に多大の犠牲を強い、新たな憎悪と報復テロを生み出すことはあっても、事態をなんら解決する道ではない。

3. 小泉内閣は、こうした米国の危険な動向を無条件に支持し、報復戦争を支援するために自衛隊派遣による後方支援を含むテロ対策特措法を今国会で押し通そうとしている。それは後方支援であって憲法で禁じられている軍事行動ではないと説明しているが、これは国際法上通用しない。自衛隊(という軍隊)が艦船や航空機で後方支援すれば、国際法では米軍と一体となった軍事行動(兵站活動)と見なされる。米軍の報復攻撃で再び反撃のテロが引き起こされれば、後方支援した日本もテロの対象となり得るのである。

4. 米国が今回のテロに襲われた原因や背景には、すでに多くの識者が指摘するように、ブッシュ政権の一方的強権主義があると言われる。例えば、イスラエルのアラブへの国家テロ行為への加担、地球温暖化防止の京都議定書からの離脱、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准拒否、ミサイル防衛構想の推進、人種差別撤廃国際会議の欠席などである。このような動きが米国への憎悪を生み出してきたことを深く認識することなしに、軍事報復によってテロは止められない。むしろ再発や拡大を招く危険が大である。

5. 小泉内閣は、憲法の理念を踏まえて冷静かつ理性的に対処するのではなく、逆にこのテロ事件を利用して、集団的自衛権の行使と有事法制定の先取りを一気に進めようとしており、断じて容認できない。日本政府が主体的に国際平和に貢献をしようとすれば、テロ撲滅の国際世論を背景に、欧米よりも友好関係にあるアフガニスタンと積極的に外交努力を行うとか、親米でも反米でもない勢力の結集をもって平和的解決を探る努力こそとるべきである。

資料@ 広辞苑によれば、テロリズムとは「暴力或いはその脅威に訴える政治上の立場。暴力主義。恐怖政治」とある。戦争は「兵力による国家間の闘争」とある。このように、テロは犯罪であって戦争ではないのだから、国際ルールにのっとって犯罪の証拠を明確にし容疑者を特定して法の裁きにかけるべきである。
また、兵站とは「作戦軍のために、後方にあって馬匹・軍需品の前送・補給、後方連絡線の確保などに任ずる機関」と定義している。
資料A
9月24日付け朝日新聞は、世論調査会社ギャラップが、米同時多発テロへの米軍による大規模な「武力報復」の是非についての世界31カ国での調査結果を21日に発表した内容を伝えている(調査は17〜19日)。
それによると、欧州や南米などでは8割から9割が「武力行使よりもテロの容疑者の身柄引渡しと裁判」を求めていることが明らかになった。「武力報復」の支持が半数を超えたのは米国とイスラエルの2国だけ(多くのイスラム諸国と敵対するイスラエルでは支持が77%、テロの標的となった米国では54%)。
NATO(北大西洋条約機構)加盟国の中で支持が比較的高かったフランスやオランダでさえ3割程度にとどまっている(調査対象に日本は含まれていない)。
資料B
国際的テロに対抗するには、新法はやむをえないとの声も強い。だが、そうした対応は、平和憲法に沿い自衛隊の海外派遣を慎重に判断し運用してきた日本の安全保障政策が、対米協力を理由に「歯止め」を失う危険性をはらんでいる。ここは、憲法と現行の法律の枠内で可能な対米支援にとどめ、新法については時間をかけて冷静に論議すべきだ。
現状の下でも、日本が貢献できる分野は少なくない。例えば、政府開発援助(ODA)でつながりのある西アジアなどの諸国からテロ集団に関する情報を収集し、米側に提供することもできる。また国内でも、在日米軍基地や原発などがテロの標的になる恐れもある。政府は自衛隊法を改正し、そうした施設を警察だけでなく自衛隊も警備できる体制を目指している。検討されて良い課題だ。怒りで冷静さを失い、短絡的に国の基本政策を変更するような政治は、避けなければならない。         [9月19日.西日本新聞の要旨]

以  上