2007.5.18

はじめに

(1)  当選以来5年9か月、私は皆さんに支えて頂き、全力を挙げて闘ってきました。この間、政府との国会論戦は230回に及び、最多質問記録になりました。またこの3年半、党の幹事長を仰せつかり、党務や院内野党共闘、全国遊説などに奔走してきました。再選をめざす次の参院選は、もう公示まで50日を切りました。
 振り返りますと、私の活動は、国民の暮らしと平和憲法を壊し続ける政治への怒りであり、対決でした。
 本来、政治とは「国民の暮らしを安定させ将来に安心を保証すること」が基本のはずですが、この6年余の小泉・安倍政治は大企業の国際競争力を強化するためと称して、国民を犠牲にしてあらゆる産業・企業でのリストラ・合理化を推進し、また一方で医療・年金・介護や福祉を相次いで改悪し、所得・雇用形態・地域間など社会のあらゆる領域に格差を拡大しました。これは弱肉強食の資本主義経済論理そのものの放置であり、政治とは言えません。

(2)  安倍内閣発足から8か月が経ちます。安倍首相は、経済面では小泉改革の「継続・加速」を、また政治面では「戦後体制からの脱却」すなわち憲法改悪を掲げて登場してきました。極めて反動的タカ派政権です。公然と改憲を唱えた首相は、1954年の鳩山一郎内閣以来2人目でしょう。首相には誰よりも「憲法を尊重し擁護する義務」(憲法99条)があり、これを端から無視する首相失格の人物ですが、一昨年の総選挙で3分の2以上の巨大与党を許した結果でもあります。この暴走を止めるには、夏の参議院選挙でわが社民党が議席を伸ばし、与野党逆転で政治転換を実現することが必要不可欠です。

1.ますます広がる格差社会

(1)  今日、景気はいざなぎ景気を越えたと言われ、大企業は4期連続で過去最高益を更新し続けています。それは、労働者の首切り・賃下げなど労働条件の改悪を基礎とした輸出増大などによるものです。日本のGDP(国内総生産)はバブル期を超えて約510兆円に上ります。これは、国民一人当たり約400万円、4人世帯では約1600万円の年収という勘定になります。しかし、働く人々の中にこれだけ所得のある家庭はほとんどありません。腹立たしい状況です。
 こうした大企業のぼろ儲けの下で、完全失業者は依然280万人、パート・派遣・契約などの不安定で低賃金の非正規労働者は1680万人(勤労者の3分の1)に膨れ上がり、そのため勤労世帯の収入は8年連続で低下し、特に生活保護基準に満たない年収200万円以下の世帯が5世帯に1世帯に広がりました。「一億総中流」という格差の少ない社会は、いまや昔ばなしにされてしまったのです。

(2)
 昨年7月、NHKが「ワーキングプア」=“働く貧困層”という特集を放送しました。その中の3つの例を、憲法の条文とあわせてご紹介します。
 第1に、認知症の妻を施設に預ける70歳代の洋服店主は、その費用がかさみ生活保護を申請したが、受理されませんでした。それは妻の葬儀費用のための僅かばかりの貯金があるために生活保護を受給できないというのです。まるで「妻を殺してお前も死ね」というに等しい仕打ちです。憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と [生存権]保障を政府に義務付けていますが、この洋服店夫妻にはそれは保障されません。今日、医療や介護でこんなケースが広がっています。
 第2に、50歳でリストラ・解雇にあった男性は、男手一つで2人の男の子を育てているが、夜も昼もアルバイトして月収20万円だということでした。将来は弁護士になりたいという子どもを大学にやれそうにないと嘆いていました。憲法第26条は、「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と[教育権]を保障していますが、この子どもたちはその埒外です。今日、就学援助を受ける子どもたちが全国で約138万人にも上ります。人生のスタートラインの段階での教育格差を安倍政治は見て見ぬふりです。
 第3に、職を求めて東京に出てきた30歳代の男性は職につけず、毎日雑誌を拾っては古本屋に売って食費を稼ぐのに精一杯だと寂しく笑っていました。憲法第27条は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と[勤労権]を保障していますが、この男性をはじめ約280万人の完全失業者にはまったく無縁です。こうした状況が凶悪犯罪を生み出す温床ともなっているのです。
 これらは、国民の権利が踏みにじられている政治の具体例です。皆さんの老後が、そして子どもや孫たちが、絶対こうならないという保証はあるでしょうか。これが「改革」を唱える小泉・安倍政治の実態なのです。
 私は、この番組を見て改めて憤りを覚えると共に、政治に携わる者として申し訳なさで胸が塞がる思いでした。社会が壊されている、このことに主権者たる皆さんももっと怒っても良いのではないでしょうか。

(3)
 莫大な利益を上げ続ける大企業には法人税を40%から30%へ引き下げ、年収3千万円以上の高額所得者には所得税の最高税率を50%から37%へ引き下げたまま、安倍内閣は今年度、大企業に4140億円の減税を上乗せし、逆に庶民には定率減税廃止や年金保険料など1兆7千億円の負担増を予算化しました。加えて参議院選挙に勝てば消費税率3〜5%アップを既定方針にしています。さらに地方自治体の共有財源である地方交付税を勝手に削減して、自治体に福祉・行政サービスの切り下げと住民の負担増も強要しています。
 正に、反国民的な政治と言わざるをえません。

(4)
 「企業の国際競争力と財政再建」などの宣伝に騙されてはなりません。例えば、トヨタ自動車は世界最大の生産台数・販売台数を誇り、2兆3000億円の営業利益を上げています。ではその下で働く労働者が世界第一級の賃金・労働条件にあるでしょうか。01年と05年を比べると、大企業の株主への配当は2.7倍、役員報酬は2倍に増えましたが、勤労世帯の収入は6〜7%も減少しています。
 また、財政再建や医療・年金改善のための消費税増税が宣伝されますが、大企業の法人税や大金持ちの所得税の最高税率を元に戻すだけで数兆円の増収になります。私が追及し続けている特別会計からの財源は今後10年間にわたって少なくとも年間6兆5千億円の捻出が可能です。こうした不公平税制を改め、特別会計を正せば、消費税増税も福祉切り捨ても必要ないのです。
 こうした私たちの主張が通らないのは、与党に3分の2の議席を与えたこと、そして「自民党とは基本政策の8割は一致している」民主党が野党第一党だからです。まさに「社民党が小さくなって政治がおかしくなった」のです。

2.憲法改悪がいよいよ正念場

(1)  次に、憲法改悪の動向についてです。
 ご承知のように小泉内閣は、01年にテロ特措法を強行してアフガニスタン攻撃の米軍の後方支援に踏み出し、03〜04年にかけて戦争準備法である有事関連の10の法案を強行し、03年には国連憲章違反(※)である米・英軍のイラク攻撃を支持してイラク特措法を強行し、自衛隊を多国籍軍に参加させました。そして昨年5月、在日米軍再編とその経費約3兆円の負担、米陸軍第一軍団司令部の日本移設など日本を米軍の前線基地・司令部化することに合意しました。昨年4月、米国のラムズフェルド国防長官は額賀防衛庁長官に「日本ほどの経済大国の軍事費がGDPの1%というのは少なすぎる。米国は4%だ」と、現在約4兆8千億円の軍事費の4倍化(米国の起こす戦争の戦費負担)を求めています。このように、小泉内閣は、平和憲法のぶっ壊しを次々と推し進めてきたのです。
※国連憲章2条=体制転覆戦争禁止、51条=自衛以外の戦争禁止、42条=国連決議なき攻撃禁止

(2)
 安倍内閣はこれをさらに加速しています。昨年末の臨時国会では、子どもたちの能力を引き出し人格の完成を目指す教育でなく、お国のために役立つ愛国心を植えつけるための教育基本法改悪を強行し、自衛隊をいつでも海外派兵するための防衛庁の「省」昇格法を押し通しました。そして今国会では、憲法改悪の手続法、在日米軍再編の特措法案を押し通し、この後もイラク特措法延長法案、教育3法案、公務員制度改革法案、労働関係3法案、社会保険庁改革法案、放送法改悪案などが目白押しです。さらに安倍首相は「集団的自衛権見直しの有識者会議」も設置しました。
 保守二大政党を目指す民主党は、これらに「対決」ではなく「対案」で対処するため、審議の過程で与党と妥協したり曖昧な態度を取ったりと、国民に問題点を知らせることさえ容易でありません。防衛庁の「省」昇格法、教育基本法、改憲手続法などが正にそうですし、公務員バッシングもそうです。

(3)
 残念ながら5月14日、改憲手続法が成立しました。これは単に手続きを定める法律ではありません。安倍内閣自身が「自民党の新憲法草案を通すための法律」と言ってはばかりません。ご承知のとおり、憲法とは主権者である国民が政治権力を縛るものですが、自民党の新憲法草案はその反対で、「国民統治の基本法に」という代物で、その最大の標的は憲法前文と第9条です。改憲手続法の成立により、早ければ3年3ヵ月後には投票が可能になります。

(4)
 何故、憲法を改悪して「戦争のできる国」にしようというのでしょうか。
 それは、海外に展開した大企業の権益を守り拡大するため、自衛隊を軍隊に変え、米軍と共にいつでもどこへでも海外派兵できるようにするためです。
 もし日本が憲法9条を変えて戦争のできる国になり、日米同盟の下どこかの国と戦争になったと仮定しましょう。相手の国は当然、空と海から日本を爆撃します。その際、相手は日本の原発と軍事基地を標的にします。原発1基が爆砕されれば広島型原爆の1千倍以上の被害です。もし福井県に林立する15基の原発が爆砕されたら、日本列島は壊滅します。なぜ歴代政府は、そんな危険な原発を55基も建設してきたか。それは、憲法9条のお陰で他国から攻撃される恐れはないとの確信があったからです。安倍内閣と保守勢力は、日本を壊滅の淵に陥れる道へ踏み込もうとしているのです。
 「万一、攻められた場合の備えが必要」という声が少なからずあります。私は、4年前の有事法制審議の際、当時の小泉首相らに「もし憲法で戦争放棄を宣言している平和国家・日本を一方的に攻めようとすれば、その国自身が世界中を敵に回し滅亡する覚悟がいる。そのような愚かな国があるのか」と問いましたが、彼らは壊れたレコードの如く「備えあれば憂いなし」と繰り返すだけで、答えることができませんでした。憲法で戦争放棄を世界に宣言した日本を一方的に攻撃すれば、アフガニスタンやイラクの二の舞になることは明らかです。北朝鮮のミサイルや核開発は北東アジアの平和と安全を脅かすもので私たちも厳しく批判しますが、彼らとて自らが壊滅する危険を冒して日本を一方的に攻撃する理由もなければ、愚かでもありません。植民地支配以降の謝罪と国交正常化に力を注ぎ、北東アジアの平和構築にこそ努力すべきなのです。
 憲法を守ることに一円も要りませんが、憲法9条の改悪を許せば莫大な軍事費と壊滅の危険に怯え、国民の権利も蹂躙される。実に愚かなことなのです。

3.与野党逆転で格差拡大社会・憲法改悪にストップ!

(1)
 以上のように、安倍内閣は一握りの大企業の利潤拡大のために、果てしないリストラ・合理化を推進し、年金・医療・介護や福祉を切り捨て、増税を課して国民の暮らしを破壊し、併せて憲法を改悪して「戦争のできる国」への転換を急いでいます。これを打破するために、私たちは何をすべきでしょうか。

(2)
 第1は、国民の暮らし破壊に反対する闘いの強化です。
 多くの国民が、格差社会の中で生活・雇用・将来不安を抱いています。しかし、政治に向くべきこの不安や不満が、「改革」の美名や、正規と非正規雇用、官と民などの巧妙な分断攻撃で抑え込まれています。
 ですから、いま必要なことは、安心できる年金・医療・介護の拡充、消費税増税反対、正規雇用の拡大・均等待遇や最低賃金引き上げなどの声を上げることです。特に労働組合が企業や産業を超えて、国民共通の「○大要求」の署名運動や大衆行動を地方から起こし、全国運動に発展させることです。フランスでは「解雇自由」の政府方針を労働組合のストライキや学生のデモで撤回させました。勤労者の3分の1が非正社員という現実の改善は労働組合の重要課題です。

(3)
 第2は、広範な改憲阻止のネットワークづくりです。
 最近の世論調査によれば、国民の改憲賛成派は6割前後です。しかし9条改悪反対も6割を超えます。つまり国会とは正反対で、「戦争のできる国づくり」反対の国民運動が大きく前進する条件はあるのです。もし国民投票になったとしても、憲法9条改悪反対に国民の過半数の賛同を得ることが、当面の最重要課題です。
 具体的には、各県で「憲法9条の改悪反対」などの新聞意見広告・宣伝運動や各地域で「平和憲法を守る(活かす)会」を結成し広げていくことです。これを全国的に結びつけて行けば、9条改憲を阻止する大きな力となります。

(4)
 第3は、なんとしても参議院選挙に勝利することです。
 参議院の与野党の差は32議席であり、野党側が17以上議席を伸ばせば与野党逆転が実現します(非改選の与党議席は58であり、与党が過半数を制するには今回64以上、つまり3年前よりも6議席増が必要。逆に野党が前回の獲得議席63を4下回っても与野党逆転が実現する)。そうなれば、内閣は総辞職するか、衆議院を解散して国民の信を問わねばなりません。そこで衆議院で与党を3分の2割れに追い込むことができれば政治転換ができます。
 そのため、わが党は私を含めて7議席以上獲得することが至上命題です。3年後の国民投票までに最低3回の国政選挙(07参院選、09総選挙、10参院選)となりますが、その中で改憲発議にかかわる議員を選ぶのか否か、つまり「9条改憲を許すのかどうか」の選挙であり、「戦争のできる国に反対する議員を」と、自公民と差別化を明確にしていくチャンスでもあります。何としても改憲を阻止し、働く人々を基盤とした誰もが安心して暮らせる社会を実現していくために、勝たねばなりません。従来に倍するご協力を重ねてお願いします。



以 上