2010.1.4

1.  9月16日に誕生した鳩山連立政権は、政権の方針を論議する40日間の臨時国会を挟んで、大車輪で09年度第二次補正予算案と2010年度本予算案編成に着手し、それぞれ12月15日、25日に閣議決定しました。
 鳩山連立政権の羅針盤は、言うまでもなく(民主党マニフェストではなく)3党の「政策合意」です。これまでの自公政権の乱脈な財政政策で国の財政は「焼野が原」状態でしたが、その下でこの「政策合意」を実現するため、社民党は12月1日に補正を含む経済対策と本予算を通じた全体の考え方を提示し、また与党3党の重点要望事項を共同提出し、そして基本政策閣僚委員会の下の実務調整小委員会(予算の作業チーム)に積極的に参画してきました。その結果、この間、進行してきた社会的セーフティネット破壊路線からの転換に大きな一歩が踏み出された予算編成ができたと言えます。以下、「政策合意」の達成度を検討してみます。

2.
  政策合意の第一に「速やかなインフルエンザ対策、災害対策、緊急雇用対策」が掲げられました。
 これを受けて、09年度第二次補正予算では、「新型インフルエンザ対策の強化」のために1,173億円、「国産ワクチン生産能力向上」のために950億円 、低所得者の新型ワクチンの接種費用を助成するために207億円等が計上されました。
 また、第二次補正予算において、09年度に発生した災害及び過年発生災害についての早期復旧と再度災害の防止等に万全を期すために4.6億円が計上されました。 
 インフルエンザ対策、災害対策は、概ね達成されたといえます。
 さらに、緊急雇用対策として、雇用調整助成金が支給されてきましたが、その期限切れや支給要件の厳格さが懸念されていました。鳩山連立政権は、大企業を対象とする雇用調整助成金の「生産量要件」の緩和を12月11日に行いました。その結果、前々年比10%以上減の場合も支給対象となりました(中小企業向けの中小企業緊急雇用安定助成金については、既に同様の要件緩和を実施済み)。

3.
 政策合意の第2項には、「4年間の消費税率の据え置き」が明記されています。「平成22年度税制改正大綱」では、政策合意文章が引用され確認しました。

4.
 第3項の「郵政事業の抜本的見直し」については、臨時国会で郵政株式売却凍結法案が成立し、次期通常国会では郵政改革推進法を提出する予定です。政策合意に沿ってユニバーサルサービスをいかに維持するかが、法案の内容となります。

5.
 第4項の「子育て、仕事と家庭の両立への支援」については、10年度本予算で、子ども手当と児童手当の併給で、一人13,000円が支給されます。子どもに対する支給であるために所得制限は行いません。なお、その財源を巡って与党内で様々な論議がありましたが、「弱者に増税を求めるべきではない」という社民党の最後までのがんばりで、配偶者控除の廃止を阻止し、また成年に対する扶養控除の廃止を止めさせることができました。
 また、12月から復活させた母子加算を来年度も継続するために183億円、父子家庭への児童扶養手当を支給するために50億円が計上されました。
 さらに、高校教育の実質無償化は、来年度から実施することになりました。

6.
  第5項、「年金・医療・介護など社会保障制度の充実」に関しては、政策合意通り、社会保障費の自然増を年2,200億円抑制する従来の閣議決定は廃止されました。10年度予算では、公共事業関係費が18.3%マイナスで5兆7731億円となる一方、子育てや教育、医療などの分野に予算を重点配分し社会保障関係費が9.8%増の27兆2686億円となり、一般歳出に占める割合は初めて50%を超えました。まさに、「コンクリートから人へ」を体現する予算になりました。
 また、後期高齢者医療制度は12年度末に廃止の予定で、現在、新たな制度が検討されています。その間、これまでの保険料軽減措置等が実施されます。また無保険者をださない、療養病床削減の見直しが進められています。
 そして、患者や公的保険が医療機関に支払う診療報酬についても、デフレで他の分野の給与も下がっている中、0.19%と10年ぶりにプラス改定となりました。まだまだ不十分ですが、「医療重視」に舵を切ることができたといえます。医師不足が深刻な急性期入院医療は4,000億円増額となるほか、配分見直しで救急・産科・小児・外科に重点化されることになります。
 さらに、障害者自立支援法については厚労大臣から廃止の方針が言明され、これに代わる新たな総合的制度を構築する予定です。そこで、社民党の強い要求も踏まえ、自立支援法廃止までの負担軽減のために、10年度予算では、低所得者の障害福祉サービスの利用料等を無料にするため107億円が計上されました。

7.
 第6項目、「雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正」は、これまでの慣例で労政審での審議が行われ、当初は難航しました。しかしようやく、労政審に「製造業派遣の原則禁止」「直接雇用見直し制度」等を盛り込んだ労働者派遣法改正に関する公益委員見解が出され、連合からも一定評価されています。
 また、10年度予算で雇用対策として170億円が計上されました。社民党が強く求めてきた、非正規労働者の雇用保険の適用範囲の拡大についても、労政審から報告が出され10年から実現されます。具体的には保険の加入要件である雇用見込み期間が、6か月以上から31日以上に短縮されます。この加入要件の緩和により、新たにパート等の労働者約255万人が対象となります。あわせて失業後1年の間は、在職中と同程度の保険料負担で医療保険に加入できるようになります。

8.
 第7項目、「地域の活性化」では、社民党が強く求めていた三位一体改革で減った地方交付税の復元のため、出口ベースで1兆700億円増となりました。臨時財政対策債とあわせた「実質的な地方交付税」では過去最高の24.6兆円が確保されました。国直轄事業への地方負担金は10年度から一部廃止されます。国と地方の協議の場についても次期通常国会に法案が提出されることになっています。
 また、販売農家への戸別所得補償制度については、10年から米作農家で先行実施されます。コメの販売価格が生産コストを下回った場合、10アール当たり定額で15,000円支給されます。
 さらに、中小企業に対する金融的支援に関しては、先の臨時国会で「貸し渋り防止法案」が与党協議を経て作成され、成立しました。

9.
 第8項目、「地球温暖化対策」に関しては、2020年までに温室効果ガスを25%削減する方針が打ち出されました。新エネルギー、再生可能エネルギーの普及促進のため、対前年度比181億円増の746億円が計上されました。また環境税についても、検討が開始されます。

10.
 第9項目、「安保・外交分野」では、普天間飛行場の辺野古沖合への移設について、県外、国外を含めて再検討されることになりました。予断は許しませんが、沖縄県民の粘り強い運動と社民党の主張の結果、歴代政権の悪しき置き土産を丸呑みすることは、当面、避けることができました。
 また、米国の報復戦争の後方支援であるインド洋における給油活動は、中止されることになりました。そしてアフガニスタン国民への新たな支援策が、検討されています。なお、社民党の強い働きかけもあって、ソマリア海賊への対処も展望しながら、海上保安庁において、「しきしま」級巡視船の整備に着手するための予算が計上されることになりました(初年度52億円)。

11.
 最終項目、「憲法」に関しては、第1項目から第9項目をとおした生活再建のための具体的施策に、連立政権の憲法遵守の理念が体現されていると考えます。

以 上