2012.1.10

1.  社会保障は社会の持続的発展の基礎であり、憲法25条の理念に基づいて「老後に安心できる年金、ほとんどお金がかからない医療・介護や教育・子育て制度」を確立する全体像がまず明確にされねばならない。その上で財源がどの程度必要で、これを所得税や法人税も含めて応能負担の原則に則って国民や企業に負担を求めるのが筋である。
 しかし、野田内閣の「社会保障と税の一体改革」素案はそのあるべき全体像が不明なまま、「2014年4月に8%へ、15年10月に10%へ」という消費税率の倍増計画が主眼である。つまり、「一体改革」は消費税増税の口実に他ならない。経済が低迷し、勤労者の所得が13年間下がり続ける下で「震災復興増税」を課し(法人税は減税)、さらに消費税倍増というのは、政治としては愚の骨頂である。


2.  増税の前にまだやるべきことがある。先の菅首相は、国会での追及に「消費増税は逆立ちしても鼻血も出ないほど完全に無駄をなくした時」と答えたが、例えば、1)国から補助金や事業発注を受けた公益法人・民間企業への支出総額7兆円余(08年度)の徹底した見直し・削減や高額天下り役員の削減、2)不要不急の公共事業、原発予算、防衛費や米軍への「思いやり予算」の削減、低い企業の社会保険負担の是正、3)特別会計の積立金・剰余金の活用、4)租税特別措置など不公平税制の徹底是正(「法人間配当無税」約2兆円含む)、5)法人税・所得税・相続税等の累進制強化や資産課税の強化…などで年間10兆円前後の財源を生み出すことが先決である。


3.  しかし、野田内閣はこれから国民の目をそらすために、「国会議員定数の削減と公務員給与の削減」を喧伝している。だが、国会議員1人(公設秘書3人)の経費等が年間約4000万円として100人減らしても40億円程度で比較にもならない。それより少数政党が切り捨てられる民主主義にとってのマイナス面の方が大きい。また、労働基本権を制約された公務員労働者の賃金・労働条件は、人事院勧告がその代償措置であるが、政府が一方的にこれを切り下げるとすれば、全くの無権利状態に陥る。憲法違反である。だから憲法28条に保障された労働三権を付与した上で、労使交渉で決めるべきだ。また公務員労働者の賃金引き下げは、未組織労働者の賃金水準の低下を招き、デフレを助長することを忘れてはならない。


 
4.  かつて「福祉目的」の美名の下、1989年に消費税が導入されたが、以来22年間に国民が納めた消費税総額は224兆円で、同期間の企業減税は208兆円であった。つまり消費税は企業減税の穴埋めにされた勘定である。だから1988年と2010年の税収構造を比べると、法人税が35.3%から18.4%に半減し、消費課税が18.9%から43.9%へ2.3倍にも増え、こうした企業優遇策によって資本金10億円以上の企業の09年の利益剰余金(内部留保)は244兆円にも上ったのである。法人税減税は各国の引き下げ競争が原因(それがまた各国の税収減・財政危機の原因)であるから、むしろ野田内閣は各国政府と協調増税を図るよう努力すべきである。


 
5.  2年半前、「現行の消費税5%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わない」と三党連立政権は国民に約束した。しかし、この政権公約も破って来年度予算では基礎年金の国庫負担分2.6兆円を交付国債によって消費税を財源にすることとしている。「うそつき民主党」と言われるゆえんである。
 私たちは、今日の深刻な財政危機も考慮し、前述した改革が徹底され社会保障のあるべき姿も合意された上で、例えば年収500万円以下の所得の低い人たちの税負担を避ける戻し税付き消費税増税論が提起されるのであれば真剣に検討するが、これらを放置し、低迷する経済を無視した消費税増税には断固反対する。

   

以 上